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* 中小企業診断士の公益活動 *


【 中小企業診断士の公益活動 】

中小企業診断士の公益活動 (「企業診断ニュース」2010年1月号掲載)

 中小企業診断士の公益活動 〜子どもの権利条約フォーラム2009の実行委員として〜

1.プロボノ

 士業者などが無報酬で行なう公益活動は、一般に「プロボノ」と呼ばれています。ラテン語の pro bono publico(公共善のために)に由来します。典型的には、弁護士の無料法律相談や無料弁護活動が挙げられます。保有する専門的能力をいかすことが特徴です。


 とはいえ中小企業診断士が専門領域とする経営支援の場合、支援機関の窓口や商工会議所の経営指導員によって経営相談サービスが無料に近い形で日常的に提供されています。普段窓口に座っている相談員の先生方が無料で経営相談にのりますといっても、今ひとつありがたみが乏しいのが実情でしょう。


 この点、例えば非営利法人の役職員となって、まちづくりや地域経済の活性化に貢献するといった公益活動のあり方が考えられます。一方で私は、有志が集う期間限定のプロジェクトチームのような活動で専門的能力をいかした実体験に基づき、中小企業診断士としての公益活動の可能性を提示いたします。以下に述べる「子どもの権利条約フォーラム」という催しの実行委員としての活動です。

2.子どもの権利条約とは

 世界の子どもたちのすこやかな育成を願って1989年に生まれた国際条約です。「児童の権利に関する条約」とも呼ばれます。日本は1994年に批准し、現在193か国が締結しています。子どもたちが未来への希望を持ち、社会の一員としての役割を果たせるように、世界中の人たちが智恵を出し合って作った、いわば子どもたちとの“約束”です。


 全54条から成り、子どもの権利の4類型として、生きる権利(生存権)・育つ権利(発達権)・守られる権利(保護権)・参加する権利(参加権)を守るよう定めています。ちなみに“子ども”を漢字で“子供”と書かないのは、“子供”だと大人のお供(付き従うもの)のような語感があるからだとか。


 大人にあって子どもにないものは選挙権など多くあります。一方で子どもの権利条約は、子どもにあるもの(若さ・未来・心身の発達)に着目して、権利として擁護するところに意義があります。決して子どものわがままを認めるような趣旨ではありません。


 一般的に法体系としては、国際法として条約があり、国内法として日本国憲法・法律・命令および条例という体系があります。例えば2010年に名古屋で国際会議が行なわれる「生物多様性」については、生物多様性条約があり、生物多様性基本法および関連法令(外来生物法など)、そして都道府県や市町村の自然環境や生物多様性に関する多くの条例が存在します。一方で子どもの権利については、基本法がいまだ存在しません。また既存の関連法令は、どちらかというと子どもに対する施し的な発想で作られているものが多く、必ずしも子どもの主体的な意思決定を想定していません。さらに、子どもの権利条例を定める自治体は一部にとどまっています。


 以前から大学教授や弁護士などが子どもの権利に関する基本法や条例を作れ作れと言っているのですが、なかなか実現には至りません。そのような現状に鑑みて、条約の趣旨をあまねく行き渡らせるべく、子どもの権利条約ネットワークが呼びかけ団体となって毎年「子どもの権利条約フォーラム」を開催しているのです。

3.実行委員となったきっかけ

 かねてより子育て支援や子どもの権利擁護の活動を行なってきた精神科医の明橋大二氏が、子どもの権利条約ネットワークと協議のうえ、2009年のフォーラムを富山で行なうことで合意しました。17回目にして北陸では初の開催となります。


 2008年5月には明橋氏が、NPO・NGO関連のメーリングリストなどで呼びかけて実行委員を募りました。私は障害者福祉施設のコンサルティングに関わっており、福祉系大学の通信教育を受けています。机上で学んだ児童福祉を実践する絶好の機会と考え、実行委員として手を挙げました。

4.実行委員としての活動

 2009年度に入ると、実行委員としての活動が本格化しました。年度初めの実行委員会で、実行委員長の明橋氏から一人一人の実行委員に対して「あなたは何がしたいのか?何ができるのか?」といった事柄を問いかけられました。私は「残念ながら子どもに直接関わる活動はしてこなかったが、建築士が主宰するまちづくりNPOでの若干の活動実績と、会議などを実り多いものとするファシリテーションの素養をもつことを踏まえると、分科会の充実やワークショップの設計などで貢献できるだろう」と述べました。その結果、私は分科会全体をとりまとめる役割(分科会部会の代表者)を仰せつかりました。児童福祉の分野での活動実績がないことを考えると、異例の抜擢です。肩書きや実績を重視する公的機関の委員会ではこうはいきません。実行委員長にはたいへん感謝しています。


 また、実行委員会のメーリングリストでは、私は当初から一貫して署名欄に資格名称を括弧書きしました。また、公式ウェブサイトにも掲げられている実行委員の所属欄には社団法人中小企業診断協会と明示しました。実行委員には教育関係者や児童福祉関係者が多く、私のような属性は珍しい。とはいえ、“なんであなたがここにいるの?”といった反応はなく、むしろ、“(少年事件を扱う弁護士や小児科医のごとく)仕事で子どもに関わっているわけでないのに時間を割いてもらってありがとうございます”といった言葉を何度かいただきました。実は50名ほどいる実行委員には、本業として会社役員を務める傍ら社外活動として子どもに関わっている方や、NPO法人の理事などとしてコミュニティビジネス(ソーシャルビジネス)に関わっている方が結構いらっしゃいます。そのような方々からは、中小企業診断士は聞いたことがある、知人にいる、といった声をいただくのです。


 さて、保有する専門的能力をいかすという観点からは、子どもの権利条約フォーラムの実行委員会全体のマネジメントについて助言などを行なう働きを期待されることでしょう。しかしながら、実は事務局長の女性(会社役員)が実務に通じたかなりのしっかり者で、要所を締めるマネジメントを行なっており、特に私が口を出すべき場面はありませんでした。私はもっぱら、分科会などに関わる個別の事柄についてコンサルタントおよびファシリテーターとしての能力を発揮しました。

5.中小企業診断士の強みをいかす取り組み

(1) ワークショップの設計

 以下のとおり、分科会の作りこみに関する助言および子ども会議のワークショップの設計を行ないました。


 まずは2009年5月に日本ファシリテーション協会の全国大会(東京)に参加して、情報収集に努めました。子どもの権利条約フォーラムとの対比において、参加者数などの事業規模が近いこと、会場の作りがよく似ていること、セッションと呼ばれる分科会の作りこみが参考になること、といった点に注目しました。また同協会は、主要メンバーにコンサルタントの素養をもった人間が多いことでも知られており(例えば事務局長の徳田太郎氏は中小企業診断士でもある)、運営のあり方が何かと参考になります。得られた知見は随時、分科会会議などで提供しました。


 一方、大人の実行委員とは別に、子ども(小学5年生から高校3年生まで)の実行委員についても公募を行ない、県内から50名もの応募がありました。子どもの実行委員が初めて顔を合わせる機会に、ワールドカフェと呼ばれる手法を用いて、自己紹介を兼ねたワークショップを行ないました。そのときの様子が地元の新聞に大きく掲載されました。活発な子や大人しい子、聾学校の子やいわゆる施設の子、と子どもたちの特徴や属性はさまざまでしたから、それぞれの特徴に応じて参加できるワークショップが奏効しました。なお、リソースの不足について士業者やカウンセラーの知人に協力を要請したところ、器材の貸し出しや打ち合わせへのオブザーバー参加など複数の申し出があり、この点でも大いに助けられました。

(2) 分科会の企画書の磨き上げ

 十数件寄せられた分科会の企画をとりまとめる、一種のコーディネーターとしての役割を担ったわけですが、企画書を通読したところ以下のような問題に気付きました。すなわち、子どもの権利条約に関するフォーラムであるにもかかわらず、分科会の企画書に子どもの権利条約の具体的条項が登場しないものが多いのです。“普段から子どもにとってよい活動をしているのでフォーラムでも何かイベントをやりたいです!”といった構成の、素朴な企画を書いてしまいがちなのですね。


 子ども会議(子ども実行委員の集まり)では毎回条約を勉強する時間を設けているのですが、肝心の大人が条約をきちんと読み込んでいなかったりするのは問題です。もちろん条約は直接的には締結国を拘束するものですが、その内容は普遍性をもっているので、民間人が各条項の趣旨に立脚して積極的に実践することは、望ましいことと考えられます。それぞれの分科会の企画内容に関わる条項(根拠条文)を明示することで、例えば役所の担当部署などに趣旨説明を行なう際の担当官の態度が違ってくるといった効用もあります。

(3) 議事録の作成

 会場担当や子ども担当などの部会ではそれぞれ活発な話し合いが行なわれているにもかかわらず、なかなか情報が伝わってこない場合がありました。忙しくて記録は後回しといった事情もあるのですが、情報共有の面では課題が残りました。


 自分の担当する分科会部会の話し合いでは、毎回きっちり議事録を作成して実行委員会のメーリングリストで情報を共有しました。これが事務局長の目にとまり、代表者会議(部会代表者などの集まり)や全体会議(実行委員全員の集まり)の議事録についても、私が作成することが多くなりました。

(4) 起業家人脈の活用

 私は地元の中小企業診断士などの仲間と毎月「とやまキトキトBIZねっと」という勉強会&異業種交流会を運営しております。2009年8月の例会では自ら講師を務めて、実行委員としての取り組みを紹介しました。演題は「子どもたちを笑顔にする仕事」です。県の起業塾を修了して教育事業を始めようとしている方や、キャリアコンサルタントとして高校生や大学生に指導している方などに参加いただき、意見交換することができました、また、同年10月には富山商工会議所の青年部で地域資源に関して講演する機会をいただき、子育てや次世代育成に関わりをもつ年代の参加者にフォーラムをご紹介することができました。

6.時流と今後の見通し

 2009年8月末に総選挙が行なわれ、民主党が圧勝しました。子ども関連施策が世間的な注目を集める機会が増えました。フォーラムにとっては追い風といえるでしょう。また、フォーラム直前の日曜日には、地元の市民団体が主催している国会ネット(国会議員との意見交換会)において、子どもの権利条約についても意見交換する機会がありました。


 近時、育児休業の仕組みづくりや次世代育成支援の計画づくりといった分野において、社会保険労務士の活躍が目立っています。今回の私の取り組みで、中小企業診断士がこのような分野で社会的な信用を得る一助となれば幸いです。


 来年は仙台で、子どもの権利条約フォーラム2010が開催されます。富山での取り組みを一過性のイベントで終わらせるのではなく、継続的な活動につなげてゆきたいと考えています。


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