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わたしたちが2年半前に「とやまキトキトBIZねっと」を発足した当時、富山では定期的に開催されている勉強会や異業種交流会は少なかったと記憶している。同業者の交流会のようなものがあっても、数回の開催のあと自然消滅してしまったり、お酒を飲んで雑談するだけの集まりであったり、といった実情を見聞きした。
とはいえ、規模は小さいながら草の根で地道に活動している、良質な団体もいくつかあった。たとえば日本ファシリテーション協会の富山地区における活動は、そのひとつである。
ファシリテーション(facilitation)とはもともと、容易にする・促進するといった意味をもつ言葉だが、近ごろは会議などを実り多いものにする技法として用いられることが多くなっている。会社の会議に限らず、行政機関での意見交換会や、まちづくりなど市民活動の話し合いでも活用されている。
ファシリテーションの全国組織であるFAJこと日本ファシリテーション協会は、2003年8月に設立された。2006年3月にはFAJ富山サロンとして、北陸地域での活動も始まった。
わたしは当時学びの機会を求めて、経営管理に関しては毎月東京の勉強会に通いつつ、地元ではFAJ富山サロンの例会にしばしば出席していた。それらの学びで得た事柄を融合して地元での活動に生かしたいと考えていたところ、「とやまキトキトBIZねっと」の運営に関わるご縁をいただいた。
それを機会にして図らずも、経営管理およびファシリテーションの双方において、地元で学びを生かすという思いが現実のものとなっている。
ファシリテーションを会議の場で活用する際の流れとしては、@場の設計・共有、A議論の活性化、B議論の構造化、C止揚・決定、という過程に着目することが求められる。それぞれの過程の詳しい中身については、参考書籍などを後掲するのでそちらをご参照いただければと思う。
以下ではもっぱら「とやまキトキトBIZねっと」における活用例として、ファシリテーションの手法が例会などの活性化に一役かっていることをご紹介する。具体例を交えて説明したい。
場の設計・共有という点では、例会は工夫の宝庫である。富山駅に近く、近隣に駐車場もある施設を例会の会場に選んでいることは、広い意味での場の設計といえる。交通の便から、おのずと客層が多様化することが期待される。また、県の女性センターを前身とする公的施設の小奇麗な会議室で毎月行なっていることも、場所柄若い女性などにも参加しやすくなっている。
意外と盲点になりがちなのは、会議室における机や椅子の配置である。昔ながらの大学の講義室のような作り付けの机と違って、貸し会議室ではかなり自由に机や椅子を配置替えすることが可能だ。原状復帰も容易なので、配置を工夫しない手はない。
まずは近ごろの例会では、机を口の字型の配置にすることが多いようだ。講師やホワイトボードを無理なく見ることができ、参加者同士はお互いの様子を眺めてほどよい刺激や緊張感を授かることができるのが特徴である。
また、会議室の広さと参加者数によっては、三の字のように黒板に対して机が平行に並ぶ教室形式の配置も行なっている。講師やホワイトボードを正面に見るので、講義内容に集中することができるのが利点である。
人数が多いときには、机を取り払って、椅子だけを配置することもある。ワークショップ形式などと呼ばれる。椅子は整然と並べるのではなく、講師を取り囲むように扇形に並べると効果的だ。机がないのでメモを取りづらいのだが、講師と参加者あるいは参加者同士のコミュニケーションが促進される傾向がある。
さらに、例会前半の講義の時間帯と例会後半の自己紹介・質疑応答の時間帯では、途中の休憩の間に机の配置を変えていることが時々ある。例えば、三の字の机の配置を口の字の配置に変えれば、自己紹介の際にも相手の表情を捉えやすくなる。扇形の椅子の配置を環形の配置に変えて、あたかもたき火を囲むキャンプファイヤーのような高揚感を得ることもあった。
そのほか、参加者の名前を座席の配置にしたがってホワイトボードに書いて、即席の座席表を掲げることがある。便宜上、男性参加者は青色で、女性参加者は赤色で書いたりしている。名刺交換しても、初対面では顔と名前がなかなか一致しない。座席表と目の前にいる参加者とを照らし合わせることで、自己紹介の時間帯ひいては二次会における交流が、多少なりとも容易になっていると思われる。
1周年記念の新春特別セミナーは、富山商工会議所の会議室で行なった。参加者数も多く、時間配分も厳しいなかで、机の移動は現実的ではない。そこで、ファシリテーションの活用としては、議論の活性化および議論の構造化という点に着目した。
わたしが新春特別セミナーで用いたファシリテーション・グラフィックは、図表などの視覚的手段を用いるファシリテーションである。模造紙やホワイトボードに議論の経過や要点を書きとめることで、議論の活性化や構造化を図る。グラフィック(ギリシア語の「記すこと」に由来)といっても箇条書きなどでまとめた文字情報が多いことが普通なので、あまり絵心は求められない。
新春特別セミナーのパネルディスカッションでは、プレゼンテーションソフトウェア(マイクロソフトのパワーポイントなど)にパネリストの発言要旨をどんどん書きとめてゆく様子がそのまま、会場内のスクリーンに映し出された。
スクリーンは聴衆に相対しているので、パネリストはファシリテーション・グラフィックの中身を見ていない。しかしながら、パネリストの発言のキーワードなどがどんどん映し出されてゆくので、聴衆は頭の中が整理されるとともに多くの気づきを得ることにつながり、反応が違ってくる。聴衆のうなずきなどの反応にこたえてパネリストの発言が勢いづくことはよくある。
往々にしてパネリストの一方的な意見発表会に陥りがちなパネルディスカッションを活性化するため、ソフトウェアとスクリーンの意外な活用法として勧めたい。
日本ファシリテーション協会の理事などが執筆した良質の書籍が、2000円前後で手に入ります。お薦めです。
日本経済新聞出版社から刊行されている「ファシリテーション・スキルズ」の単行本
(著者はFAJの堀公俊・加藤彰・加留部貴行の各氏)
『ファシリテーション・グラフィック』(2006年) ――議論を「見える化」する技法
『チーム・ビルディング』(2007年) ――人と人を「つなぐ」技法
『ワークショップデザイン』(2008年) ――知をつむぐ対話の場づくり
『ロジカル・ディスカッション』(2009年) ――チーム思考の整理術
PHP研究所の単行本(著者はFAJの桑畑幸博氏)
『目に見える議論』(2008年) ――会議ファシリテーションの教科書
月刊「商業界」2010年1月号の記事(著者はFAJの徳田太郎氏)
不況と無縁の儲けのしくみ Vol.12 「徳田太郎のファシリテーションの極意」